2015年7月29日、Windows 10登場。新しいWindowsが登場すると、ここぞとばかりにマイクロソフト以下、PCメーカーや家電量販店が宣伝で盛り上がるのがいつものパターン。ですが、今回はどうやら様子が違うみたいです。
これは、Winddows 10発売後に、京都駅前で撮った写真です。「新しいWindowsへようこそ」って、よーく見るとWindows 8じゃないですか。しかも、例年だとアメリカのクリスマス商戦や、日本の冬のボーナス時期を見計らって、10月~11月に新Windows発売開始だったのが、7月29日発売って、これ夏のボーナス商戦が終わった時期じゃないですか。
では、なぜ地味なスタートになっているのか。最大の理由は、1年間限定ではありますが、Windows 7とWindows 8(8.1を含む)ユーザは、無料でWindows 10にアップデートできるという点にあると思います。これだと、発売開始前でも
「Windows 10に無料でアップグレードできますよ。」
という売り方ができるわけなんです。また、従来のユーザを焚き付けて、新しいWindowsのアップグレード版を売りつける必要もないのです。だから、無理して宣伝する必要はないというわけです。
では、なぜマイクロソフトは戦略を変更したのか。ジーン吉本なりに考えた理由が、以下の3つです。
1.新OSはユーザに取って歓迎されるものとは限らなくなった
話はWindows Vistaに遡ります。Windows Vistaの目玉機能は、WinFSと呼ばれる新しいファイルシステム。しかし、開発が間に合わずにお蔵入り。で、中途半端な状態で出荷されたWndows Vistaは売れず、むしろWindows XPの人気が上がるという情けない状態に。
更に酷かったのがWindows 8で、デスクトップを脇役に持って行き、マウスだと恐ろしく使いにくいスタート画面をメインに持って行き、挙句の果てにスタートボタンを外した結果、ユーザからの評価は惨憺たるもので(当然だと思いますが)、新OSの登場がWindows PCの拡販に追い風になるどころかブレーキになってしまったのです。
こうして、何度も失敗作Windowsを出した結果・・・
「新しいOSだからと言って、優れていると限らない。むしろ、今までと使い勝手が変わるし、今まで使っていたハードウェアやソフトウェアが使えなくなる可能性があるから、無理に新しいOSに変えたいとは思わない。」
と考えるユーザが出てきてしまったという訳です。
2.OSをアップグレードしたところで、どうせ新しいPCを買う羽目になる点に、ユーザは気付いた
今まで、Windowsのバージョンが上がれば、その分CPUやメモリへの負担が大きくなり、快適に使うためには結局PCを買い直す羽目になっていました。それが、Windows Vistaの失敗以降、OSが新しくなったからと言ってCPUやメモリへの負担が大きくなるとは限らず、むしろ軽くなって行っている感じすらするようになりました。
しかし、Windows 8(8.1も含めて)を快適に使うには、タッチパネルを搭載したり、解像度が高い16:9ディスプレイが欲しくなったりするわけでして。結局のところ新しいPCを買うことになってしまうというわけです。それだったら、別にWindowsをアップデートしなくていいから、今までのPCを末永く使いたいと思っている人がいてもおかしくないのではないでしょうか。
3.OSのバージョンを問わず、とにかくWindows搭載PCを売る戦略にシフトした
かつてWindows 8が発売された当初・・・
「Windows 8って、とっても売れているんですよ。」
・・・とマイクロソフトは言っていました。しかし、PC工場をよーく見てみると、Windows 7がインストールされたPCがどんどん出荷されていたのです。どういうことかと言うと、Windowsはダウングレード権というのがありまして、現行Windowsよりも1つ前のWindowsをインストールしても構わないのです。結果、Windows 8のライセンスは売れているにもかかわらず、Windows 8を搭載したPCは市場にあんまり出回らず、Windows 7を搭載したPCが市場に供給されるという事態になってしまったのです。
正直、これは何とも情けない結果ではあります。しかし、この状態を落ち着いて考えると・・・
「別にWindows 10が出たからと言って、Windows 10を搭載したPCを売らなければならないという決まりはない。Windowsのバージョンは何でもいいから、Windows PCが売れればいいじゃないか。」
・・・とマイクロソフトが考えても、不思議ではないような気がします。そうなると、無理にWindows 10の発売を強調する必要はなく、単純にWindowsの優位性を強調すればいいというわけです。
考えてみれば、OSはあくまでもハードウェアを使いこなしたり、アプリケーションを使いこなしたりするためにあるわけでして、本来は脇役であるはずなのです。なので、
「新しいハードウェアやソフトウェアをサポートするため、新しいOSが必要だったんです。」
ということであれば、ユーザも納得するんじゃないかと思うんです。かつてWindows 95がプラグアンドプレイをサポートしたり、Windows 98がUSBをサポートしたり、Windows XPが無線LANをサポートしたように。